この記事の冒頭に、「現場の外科医、麻酔科、看護師の衝突があり、その改革に看護師長が関わり…」とあった。この病院のことは横に置き、私の経験に照らし合わせて思い返した。
@看護師は専門知識をもっと勉強すべきだ。
・・・立場、階層、キャリアが違うとこのような意見は出ることが多いだろう。背負うモノ、追い求めるものの質と量の違いが見解や認識の差を生む。それを前提としたうえで、「仕事では補助職以外は専門知識をもっと勉強すべきだし、専門職を自称するならなおさらだ。」と私も思う。私自身お客様にも常にそれを求められているから、当たり前のことと思う。この当たり前がなかなか通じないところが現場での現実の問題だ。
知合いの営む会計事務所では諸事情があってベテランの退職が続いた。若手の補充育成でしのごうとし、2年ほど彼は仕事の質の維持と若手育成のギャップに苦しみつつも真剣に両立に取組んでいた。彼は年中無休で働いていた。ある時、やむにやまれぬ必要性から、有資格者の中途採用を行った。そうすると、若いにもかかわらずその有資格者たちは、わずか半年から1年で彼らより5〜10才年長者のベテランと言われた先輩たちの仕事のレベルを超えたという。資格を取る努力、資格に対するプライド、資格を生かした仕事の真剣さの差に彼は驚いたが、資格を持つ彼らをもっと伸ばすのが自分の仕事と考え直したと彼は言った。それがお客様のためでもあると彼は考えたようだ。いま彼の事務所は仕事に追い風が吹きつつあるという。
A公然と人の悪口を言うのは言語道断。
…これも一理あるし、大人としては場をわきまえ、相手を尊重することも大事だ。私のサラリーマン時代だが、管理者が幹部の前で同調しながら、幹部不在の私たち部下の前で平然と悪口を言う場面を何度も経験している。面従腹背である。もの金を自分一人の成果としたがる上司に多く見られた。これらが人にはあることを前提にコミュニケーションを考え、組織運営が必要だから、経営コンサルタントとして倫理感・道徳観に訴え、きれいごとを目指すことを求める。しかし一部の管理者や経営者は必ず次のように言う。「世の中はきれいごとばかりではない。現場、現実、実務を経営コンサルタントは分かってない。そんなきれいごとが通るわけがない。」
このような価値観の管理者や経営者のもとで、組織に秩序が生まれ、それが維持出るだろうか。
B執刀医ごとに手術の際の機材準備、清掃の手順が違う。現場にはいら立ちが募る。
…これも理解できる。税務署に提出する税務申告書類は全国一緒の様式、同じ条件なら税率も同じだが、申告書作成までのプロセスは税理士事務所によって差がある。会計事務所によって内部管理の仕組みは違うし、職人一人親方的な事務所の仕事ぶりではなおさらと思う。職人感覚では組織全体の生産性や効率という考え方が機能しないのだ。この場合、トップが真剣に本気で改めようと思うと是正できるが、下からの改善はベテランほど慣性の法則が強く働くので難しい。
何かを改めようとすると対立というか非協力の雰囲気が起きる。ここを活力として転換するのが実務での頑張りどころだ。相手と正面から向き合い、波風を立たせた上で折り合える場所と方法を探る。人によっては相手のメンツも立てなければならない。相反する意見を会議などの表立った所で出さないなら、別に飲食の場ででも意見交換が必要だ。言うことをお互いに言うという対話を経て、吐き出すものを吐き出して、やっと実行できる意思決定(合意)につながる。この手間暇を惜しんで、理屈に走って、私はずいぶん失敗した。振り返って、人間は理屈よりも感情が勝るものと思う。