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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信2009年1月号(62号)より

2009年(平成21年)が始まりました。ご縁をいただきました皆様とは、今年もさらに信頼の絆を深め、すでに影響が出始めている超大型台風並みの大寒波と暴風雪を、耐えてしのいでいかなければなりません。励まし合いながらも、自分を信じ、関わる人を信じ、自分達の知恵を絞りぬき、共に働く仲間と協調し、迅速な行動を積重ねて行きましょう。

【新たな年を迎えて】
 新聞等では、10円の円高は製造業の経常利益を6%下振れさせるとか、日本学生支援機構による奨学金も滞納が増加しており、2007年度末で3カ月以上の滞納が2252億円を超えている(対前年度9%の増加)との報道もありました。アメリカの金融機関が受けている公的支援総額は7.8兆ドルに達したというものまでありました。数値は発表されるものによって大きな差があり、どれが実体かは私にはよく分からないのですが、大衆の予想を超えて大変になっていることは間違いないですね。日本の外資系金融機関の人員削減も続いており、今年の前半で昨年からの累計で4400人が失職するのではとささやかれています。これは外資系金融機関に勤務する人のおよそ16%に達する数字といいます。このことは私が思うに、日本の金融では従来のように儲けられないということです。日本では上場株の外国人保有割合が3割、売買割合が6割だそうですが、昨年1~12月の売り越し額は3兆5538億円となった模様という報道でした。売り越しは8年ぶりのことであり、一昨年は5兆円の買い越しだったといいますから、日本では当分うまみのある株価の差益は期待できないとの読みなのでしょう。
 12月に仕事でお客様を訪問した時には,おかげさまで皆様のところは大きな売上減という数字の変化は見られませんでした。しかし年末が近づくに連れ、高額奢侈品を扱う企業は予約が滑り落ちるように急減し、自動車関連商品を扱う企業も新車販売台数の減少率に比例して急速に販売額が落ち込んでいると聞かされました。ですから、それらの企業とお取引のある経営者は、「12月は師走商戦とは思えない惨状だ。」と嘆いていましたから、今後は国だけでなく、地方自治体の税収も大きく落ち込んでいくことでしょう。
 吉見個人としては、「今後の売上高は、悪く見積もると北海道平均で3割ダウンする可能性が強いことを前提として、経営の舵取りをするようにしよう」と12月の訪問先で話をしてきました。「生活必需品などを扱い、店舗に顧客の強い支持があれば1割程度の落ち込みで済むだろうが、贅沢品や娯楽品・急ぐ必要のないものは一時的に前期実績の5割ダウンをする可能性が強いと思っている。」とも伝えました。誰もが同じ時代、同じ地域で生活をしているのですから、自分だけが例外ではないのです。じっと暴風雪と大寒波が過ぎ去るのを待って済むような生易しいものであればいいのですが、今後最低でも3年は昨年より悪い状況が続くことを想定して準備をし、打てる対策をすべて実行していく年です。
 世の中はゼロサム社会であり、調和の社会であり、貸借均衡する社会でもあります。誰かの収入は誰かのコストです。誰かのデメリットは誰かのメリットです。売上高がマイナスの企業もあるけれど、売上高がアップする企業も間違いなくあります。金融不況も運用する資産を持たない者にとっては暴落や目減りの影響はありませんでした。円高も輸出と無関係な個人には、輸入品の値下がりの恩恵が期待できます。とはいっても、今後間接的な影響は必ず受けますが、この災いと思える流れの中にも、幸いに転ずるものがあるはずです。意識を集中して、目を凝らして、光るものを見出していきましょう。

【今年地域で生きる、職場で生きる】
 経営の現場でも取引の場面でも、最後にモノいうのが対人能力(関わり方、なじみ方、折り合い方など)だ。教育学者フレーベルは「大人になって良い仕事をする人は、皆共通点を持っている。それは、(1)幼児の頃、遊びほうけた経験を持っている。(2)ものごとに熱中した経験を持っている。(3)そのことを温かく見守った母親との肌の触れ合いを持っている。この3つの共通点こそが、『人間力』の基礎を形成するものに他ならない。」と言っている。大人は全員子供時代を経て現在の大人になっているのだから、個々の人の生まれ方、育ち方、学び方、育つ環境の影響は大きいものなのだが、普段は忘れているというか無意識に生活をしている。無意識であっても日常生活は過去にインプットされているものの影響がとても大きい。だからこそ定期的に自分の生まれや育ちや家系を振り返ることの意義がある。
 江戸時代や明治期に日本へ来た外国人たちが書き残した日本人の印象は、「まごころ(精神性)の高さと貧しさの中にあっても気高さがあることだ」という。過去2~3年の仮装・隠ぺい・偽装事件の多発や、行政担当の公務員の繰返される不祥事に、日本人の美徳とされた精神性の高さや気品の高さはどこへ行ったのだろうと思ってしまう。最近、倫理観や道徳観が大きく損なわれているからこそ、今年はこの点を大事に生きる人達と共に働きたいと思う。
 暮れにNHKの教育テレビ(子供向け英会話)に、日本に来ているロック・ギタリスト、マーティ・フリードマン氏が出ていた。彼はヘビィメタルバンド「メガデス」でメジャーデビューしたという。彼は現在の日本の素晴らしさとして、①便利さ、②人の優しさ、③勤勉、④清潔、⑤物を大事にする、を指摘している。今の私たち日本人も、まだまだいいものを持っているということだ。これらは、私達の先祖(両親、祖父母、曽祖父母たち)が、何かにこだわって大切にし、何かをしっかり守り、工夫して生きて死んでいく中で残されたものだ。それらが何であったのかを認識する人が、もっともっと増えてもいいだろう。
 年末の挨拶メールで、私は次のように書いて送った。「自分の言葉を守り、関わる人の言葉を信じて生きたい。言葉を守ることは約束を守ることであり、それが秩序を維持するもととなると思うから。」
不必要にへりくだる必要はないと思うが、聞く気持ちのない人、理解しようとしない人には、何を言っても、どう表現しても、その時にはその人に通じない。自主性に任せるといったところで、自立し、判断能力が備わり、行動力があるに人は問題ないが、従属し、思考停止、受け身で行動力のない人が相手では、任せたことを成果物とすることはないだろう。
 私は精一杯努力しても話が通じないのなら、不遜な言葉や居丈高な言葉ではなく、自分がいただいて不快とならぬ言葉を投げかけた方が良いと思っているだけのことだ。言葉が荒れるときは心も荒れるし、言葉を失うということは言葉が表わす心も失われていく。相手の理解力やレベルに応じた説明ができるかどうかとは別の問題と思う。職業上相手の理解や納得の得られないことは、修行の足りぬ私の不徳なのだから、説明が下手という意見に私は反論をしない。つらくとも、相手と向き合い、前を向いて、生真面目に、実直に歩むことしか私はできないからだ。
 最後に精神病理学者である木村毅氏の意見(日本経済新聞2008.12.21掲載)を一部省略して引用する。「まず『あいだ』があり、自分の精神現象と他者の精神現象が現れる。…生物は限りある命を生きている、代わってもらえない身体を持っている。人間のみが死ぬことを知っており、それが精神病と大いに関係がある。20世紀後半に若い人が個人中心的に考えるようになり、個と集団の葛藤に起因する統合失調症が軽症化したと言われる。…発達障害、引きこもり、多重人格など新しい病名が増えているのは、生命の根源と個別的生の間の自己とのつなぎ目の不具合が、形を変えて出てきている。…患者にとって薬で症状を取られることは、自己防衛手段を奪われることと同じ。」
 人間も生物であり、動物であり、自然の中で生きるものである。人間は人工物ではない。人工物の都会の便利さの中で暮らし、人工物の道具や機器の中で暮らしてはいるが、自然の春夏秋冬の寒暖の変化、晴れ・曇り・雨・風・嵐・雪など人間が統制できない気象や自然環境の中で私たちは生きている。私は、機器に頼るだけでなく、自分の五感でも感じることが一層必要なのが今年であると思う。

[ 更新:2009-01-05 10:21:18 ]

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