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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

【日本創造経営協会 平成17年通常総会】

 昨年6月17日に日本創造経営協会の総会(東京)に初めて出席させていただいた。始発便の飛行機の窓からは、樽前山・支笏湖・雪の残る羊蹄山を見ることができた。自然豊かな北海道に暮らせることは幸せと思う。総会終了後の講演会で印象的な点(中小企業にも参考となる点に絞り)を紹介させていただく。

「5年後、社会技術はこう変わる」放送大学教授 森谷 正規氏
*最近技術が流れている。というのは「製品は機械がつくる」から、製造機械が売れ、輸出されるということは、製造機械とともに技術が流出する結果となっている。加えて技術者のハンティングも盛んである。
*製造業においては、「適切な時期に、リスクを取って投資することが必要」。成功と失敗の差は、意思決定にかける思いの強烈さではないだろうか。製造業として競争力を持って伸びていくには、技術者を育てる風土の有無が大きい。
*PC技術、ソフトは理詰めの理解力があれば対応はできる。
*計画生産の方が受注生産より品質は高められるもの。
*日本の強みは熟練労働者の育成と擦り合わせ型。日本は無駄ができない国であり、蓄積していくことのできる強みがある。日本が得意なのは、モノとサービスを一体化していくこと。取引関係のパートナーとして一体化した製作を意識しよう(創造経営では企業群創りと表現している)。
*ローカルではサービスで差別化をする。まずサービス概念をしっかり詰め、どんなサービスができるか、そのサービスを持ってローカル及び国内需要が開拓できるかを真剣に考えよう。「多様で、少々高くても売れるモノ(サービス)創り」がキーワード!
*労働力には、①単純労働力、②熟練労働力、③知能労働力があるが、今後単純労働と大量生産の領域で日本が勝つ事は難しい。

「共生と共益の企業群経営―生命(いのち)輝く経営」
日本創造経営グループ 代表 礒部 巌氏の講演から
 礒部先生の講演を聞き、私なりの思う所を書いてみる。財には人工財と自然財があるという。人工財の恵みを随分我々は受けている。私が4~5歳の頃、芦別の炭鉱長屋で一家5人が暮らしていた。今見回すとごく普通にある、パソコン・電話・FAX・電気冷蔵庫・洗濯機・テレビ・電子レンジ等々何もなかった。石炭ストーブを勢いよく燃やすが、炭鉱長屋は粗末な木造、家の中でも寒暖の差は大きかった。マイカーなど想像もできなかった。町内の引越しは馬車が使われた時代だった。それから40数年、庶民の暮らしは本当に豊かになりはしたが、大量廃棄の問題が生じている。
 人工財に対するものとして自然財があるという。自然財は自然にしか生み出せない財であるが、今我々は「この自然財の循環再生産機能に翳りが出ていることに危機感を持つ時期にきている」と指摘された。環境経営といわれるが、「今抱える問題、苦しみを乗り越える原点は何だろう?」と問われたとき、なんと答えるだろうか。日本人の歴史を振り返ると、自然を本当に大切にした国民である事が分かる。素朴に、水・空気・土壌・宇宙をたたえてきた。今の時代に眼を移すと、2007年より日本の人口が減ることを我々は体験する。その意味で今後の2年間は重要であると教えられる。
 少子高齢化問題はいろいろ取りざたされるが、「元気に高齢化、健康年齢と死亡寿命の差をなくしていこう」という提言は意義深いと思う。ただ長生きすれば良いというものでもないだろう。「夫婦で健康・長生き、その時に志をしっかり持ちなさい。何の志もなく、ただ生きてどうするのか?」加えて礒部先生は、「物の見方や考え方のベースは食生活、科学技術も大事だが日常生活はもっと大事! 2020年にはいろいろな限界がより明確になる。」と言われた。
 少し抽象的となるが、生と死を超えているものは何だろう? 私達は生きているのではなく生かされている事に気づける人は素晴らしいと思う。私はこの辺の感度がどうも低い。しかし、困った事、悲しい事、苦しい事が起こったとき、「新しい事をやっていこう!」という思いとエネルギーは大切だ。「我々は迷惑をかけながら生きている面がある事を自覚し、自他、個と全が一つになって共生を可能とし、さらに積極的に他への貢献、共益となっていく。」というまとめを自分自身の問題として個々人がどう受止めていくかが問われているのだろう。

知研フォーラム281号に掲載されたものより引用させていただく。

【合意学】宮城大学・知研理事長 久恒 啓一氏
 自分の頭で考え、どれがいいかを決める。この作業を通じてはっきり自覚ができる。最近「我社に考える社員がいない。」と嘆く経営者が多い。
 分かっている事(理解)、疑問に思っている事、批判している事の3つがはっきり分かっていれば良い。「私はあなたの意見に賛成です」「これは疑問です」「私はあなたと意見が違います」の3つが言えればいい。
すべての問題は問題解決が可能であり、合意に近づけることができる。要は企画力の問題であり、情報により目線を上げることである。同じものを見て違う判断をする人は少数であり、同じ条件で逆のことを言う人も少ない。通常人々は自分たちが参加する部分があれば納得する。 
 問題は何か。その問題はどうやったら解けるかにこだわろう。

【良い企画書の構成】①タイトル、②狙い、コンセプト、③対象者、④スタイル・形態、⑤目次・概要、⑥実績・プロフィール、⑦見本・サンプル、⑧公開された情報

 意見が違うように見えても、ある情報を知らなかったためとか、誤った先入観とか、考え違いとか、最新情報の不勉強とかが原因である事が多い。
 お客様及び社員のニーズを深掘りし、問題がどこにあるかしぼり出し、その解決に全力をあげる。そのためにはまず相当量のヒヤリング、意見の引き出しを行なう。それらの意見の根本を要約し、関係と構造を明らかにする。それを関係者に見せて議論をする。合意を取ることが目的ではなく、問題解決をする過程で合意ができる。
 合意とは意識を合わせること、低い所にいる人には情報をあげて、見晴らしの良い所に高めてあげる。企業の行なう活動はコミュニケーションが基本。企業には、ヒト、モノ、カネ、時間、情報、システム、技術など様々な経営資源があり、これらの経営資源をコミュニケーション活動により活性化させ、仕事やサービスを作り出す。社内のいろいろな分野の人が集まり、同じ目的に向かって仕事をするのはコミュニケーション活動だからである。全体の中で何を答えたらいいかを明確にする。自分の言っている事は全てではない。

 人事部が人を動かすのは、情報は人についているから。人をかき混ぜる事によって情報が攪拌され、一種の化学反応が起こることを狙う。教育は新しい情報を人に与える活動である。経理はお金という共通言語で全セクションを回す。営業はできた商品やサービスを社外に販売する。広告と一緒になって販売促進活動や宣伝活動をするが、広報活動はすべてコミュニケーション活動と言ってよい。企業はコミュニケーション活動で商品・サービスを生産・販売して世の中に送り出している。その商品・サービスをお客様は、それを良いとか悪いとか言い、CSとはそのお客様の声を聴く行為である。そこで得た情報をサイド会社の中にフィードバックし、再度コミュニケーション活動を活性化させる。これら一連のコミュニケーション活動がうまい所は栄え、下手な所が滅びる。

 サービスは評判が良ければよいとする。定量主義は後追いに過ぎない。自分の国のもの(自社のもの)を大事にして、良いもの、美しいものを作り上げる。江戸中期の未来学者三浦梅園は「本質を語るものは全て歴史と地理だ。」と言ったそうだ。加えて今は現場を見ること。定性情報を深く見つめ、何を言おうとしているのかその深みにまで想像を到達させてその意味をひとつひとつ確定する。
 人間には自分にとっては多少不利で損でも、長い目で見、大きな立場から見ると大儀に従う事が正しいと理解する英知を持っている。

会社支配を考える(資源配分機能の重視を)(日本経済新聞2005.3.25)
慶應義塾大学助教授 小幡 積氏

 知恵と労働を提供した従業員には賃金という形で、資金を提供した株主には配当あるいは株価上昇という形で分配がなされる。会社に対する貢献の対価といてお金を得る点では同じである。バブル崩壊後、企業が倒産せずに存続するためには従業員を犠牲にしなければならず、従業員を生かすためには債権者である銀行が犠牲にならなければならない、という利害対立の表面化が避けられなくなった。このような利害対立をどのように解決すべきか。

 お金という財は、交換可能、移動可能かつ蓄積可能であるから、一部に偏在し蓄積され、大きな力を持つように見える。

 上場企業には社会的に成功した企業というイメージがある。上場を目標に励む経営者も多いし、優秀な人材や資金が集まりやすいという実利もある。上場(公開)企業と普通の株式会社との違いの本質は、その株式に対し市場で値がつくということであり、一番高い値段を払った人が株主になるというメカニズムを選択することである。株主は誰がなっても構わない、最も価値を認めてくれる人が所有権を得るという仕組である。株式会社は、株主が持ち株比率に応じて、会社の意志決定権と利益や資産の受益権を持つ。このルールの背景にあるのは、企業の利益や資産という経済価値の配分を受け取る人が意志決定権を持つことで、その企業の経済価値は最大化するという論理である。株式を市場で取引することにより、企業の経済価値を最も高める自身のある人が、その自身の表れとして最も高い値段で株式を購入し、企業の所有権が最も適切な主体に移動する。この結果、資金・資源配分の効率性が経済全体で実現するというのが株式市場の資源配分メカニズムである。
 資金提供者が意思決定権を持つのは、資本が人的資源に比べて低いコストで企業間を移動し、各企業の価値増加機会に中立的に判断できるからである。反面、どの資本がどの企業の投資機会に参加することも可能だから、資本間の競争は激しく、超過利潤を得る機会は希少性・特殊性の高い人的資源よりも少ない。意思決定権を持つことと、利益を独占することは全く異なる。
 「資源の価格はその希少性によって決まる」という経済学の原理からは、金が余り、優秀な人材が貴重になる21世紀には、会社の意思決定権を持たない社員が株主よりも金持ちになり、優秀な人材に報いない会社は衰退していくことが示唆される。
 会社は、アイデアやノウハウとそれを実行する人間、経営を助ける道具により成立しており、これが融合し構成物とは別の有機体が生まれるわけではない。「会社を守る」というが、守るのは構成員なのである。だが従業員の給与体系に実力主義が広がり格差が拡大しているため一体感は低下している。加えて、社外取締役の増加、終身雇用制の恩恵を受ける人の減少、転職の増加などにより、経営陣と従業員の連帯意識も低下している。

[ 更新:2006-06-08 15:53:26 ]

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