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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信 2007年1月号より(第38号)

【北海道】 【創造経営コンサルタント部会 相談役・顧問・幹事会】 【高校の学び】 【失敗と品質保証】 【改善】 【管理者・後継者に望むこと】

謹んで新春のお慶びを申し上げます

【北海道】
北海道の開拓の歴史は130年に及びますが、環境は大きく変わってきているように感じます。国が北海道を論じるときの前提は、これまで「開発」「国防」「食料」でしたが、人口減少社会の到来で、人口増加の圧力による「開発」は終わったといえるでしょう。東西冷戦時代の北方の防備を担うという「国防」という地域的観点も役割が終了しています。食料供給基地としての役割も、国の評価は変わりつつあるようです。日豪EPA交渉ですが、豪州からの牛肉・乳製品・小麦・砂糖などの関税撤廃で、北海道農業関連は拓銀破綻なみの大打撃を受け、失業者は最悪2万人をゆうに超えるという試算が北海道庁により示されました。北海道の関係者は例外措置を認めるよう強く働きかけているのですが、日本(独占資本の立場といった方が良いのかも・・・)にとって豪州は石炭や鉄鉱石の主要輸入先であり、EPAを結ぶと資源の安定調達が期待でき、自動車や機械の輸出拡大につながるとして、日本経団連は早期締結を求めているそうです。先行きは分かりませんが、北海道切捨ての流れは進んでいます。これらの環境を乗り越える経営をしていかなくてはいけませんから、強い気持で主体性企業、自立性企業として、この素晴らしい北海道の地でたくましく生きていきましょう。

【創造経営コンサルタント部会 相談役・顧問・幹事会】
 昨年11月16日松島で会合がありました。いつもは東京の本部(本郷)での開催ですが、年一度はこれまで部会活動に尽力された相談役・顧問の方々を囲み、最近の部会の活動報告と大所高所からご意見と指導をいただこうとして行われたものです。松島は現在の部会長の平塚先生のお膝元ということで選ばれました。会場のホテルは小高い丘にあり、松島の景色がとても美しく、平塚先生お奨めの早朝の日の出、朝焼けは絶景でした。若いときはなんとも思わなかった景色に、日本の美しさを感ずるようになってきました。
 少し早めに着いた私は、松島の名庭園といわれる円通院に行きました。金沢に行くと前田家ですが、こちらは伊達家、伊達政宗公嫡孫伊達光宗公の菩提寺で、院内を歩くと季節柄赤く色づいた小さな紅葉の落ち葉が足元に舞います。東北の秋の深まりを感じさせます。印象的だったのは、松島湾内に実在する七福神の島を庭に表した「七福神庭園」、正式には石庭「雲外天地の庭」というようですが、松島湾は白砂で周囲の山々は苔で表すというものでした。350年維持管理され、背景と一体化させていく庭師たちの心が、見るものに何かを訴えかけているかのようでした。

【高校の学び】
 学習指導要領に基づかない授業の問題が取り沙汰され、自殺者まで出てしまいました。教育も企業も同じで、「社会に貢献する人材をつくりだす」という使命感が欠落してきているのでしょうね。「社会貢献」と言ったところで、全員に通じることは難しいし、受止め方のレベルや深さも様々ですが、だからこそ教育者や企業経営者はこだわっていかなければいけないことと思います。中学校では「常識や知識を広く持っている子の方が、長期的に見て学力は伸びる」と見られているようですが、企業の若手社員を見ても同じです。広い常識や知識の上に、各業種特有の職務能力の練磨があり、人格の練成が図れて、仕事の成果を通じて「社会貢献」につながっていくわけですから、入社から定年退職まで連続性を持った教育(自己啓発と相互啓発、OJTやOff-JT)は重要です。そのような仕組みを一緒に作って、運用していきましょう。

【失敗と品質保証】
 私も常に失敗をしています。時折自己嫌悪になりますが、逃げずに辛抱して乗り越えることで、自己成長が図れるようです。いや、自己成長するための「試練」だからきっちり向き合おうと、自分に言い聞かせて対応しているというのが本当です。
 身の回りの携帯電話でもインターネットでも、日々製品が複雑になっているわけですから、生産の現場では必要な知識や技術がどんどん高度になっているはずです。ですから改めて、生産現場とそこで働く人々への敬意を忘れてはいけないと思います。私個人としては、新しい製品やシステムがあまりに急速に高度化、複雑化して、従来の常識が通用しなくなり、不適応状態に陥っていると思うときが結構あります。
 生産品の返品を見る場合も、社内要因としての製品そのものの問題か、製品に問題はないが、取引先の取扱い上のミスか、物流過程の破損などのトラブルか、社外要因かも含めて原因を追求し、問題解決していく必要がありますから、生産現場の方は本当に大変と思います。基本姿勢は、不具合はお客様のところで表に出ては信用を失うわけですから、常日頃からお客様と情報交換を行い、返品や不具合につながりかねない小さな兆候をつぶしていくことです。「小さな兆候に気づける」人をたくさん育てたいですね。
 それから、中小企業では現場の知恵が個人に帰属して、何かあっても現場や個人の責任で終わらせてしまいがちです。大事なのは、同じ誤りを繰り返さない仕組みつくりです。原因追求をしっかり行い、再発防止の仕組みつくりと、作った仕組みを運用できる人の育成という管理パターンをしっかり社内に構築していきましょう。

【改善】
不良品ができる理由が分かれば、品質の良い製品を作るための条件が見えてくるはずです。原因追求の「5ゲン主義」は、製造業でなくとも覚えるといろいろ応用が利きます。「現場にすぐ行き」「現物を確認し」「現実的な解決策を」「原理」「原則」にのっとり考え、速やかに実行するというものです。「原理」「原則」は職務能力の基礎知識であり、専門知識であり、経験知であり暗黙知も含まれていくことでしょう。やはり連続性を持った教育(自己啓発と相互啓発、OJTやOff-JT)は重要ですね。

【強さ】
10年以上継続している企業には必ずその企業固有の「強さの特徴」があります。競争力を高める場合、まずここをしっかり押さえましょう。次に、自社の商品、製品(お金を払ってもらえるもの)の競争力を高めるための努力の仕方が明確になっているか確認しましょう。自社の商品、製品をもっと良くしていくための貪欲さがどれくらいあるでしょうか。そのためには、「あってもなくてもいいもの」を合理化することを忘れてはいけません。何かを得ることは、何かを捨てることです。
私も時折マーケティングの真似事を診断のときに行いますが、マーケティングはひとつのセンサーであって、最終決定事項が見つかるものではないように思っています。最初に売れた商品が、同じ売れ行きで永遠に売れ続けることはありえません。飲食店であれば、人気メニューや定番メニューであっても、素材・加工工程(調理方法)・レシピを常に吟味して、改善・改良にこだわらなければいけないのです。毎回同じものでは、いくら美味しくても飽きてしまいます。ヒット商品が出て、利益が積み増されたとき、決算賞与の社員分配も大事ですが、営業利益率を固定し研究開発というう味や接客、ハードやソフトの雰囲気の向上に投資することも大事です。

【管理者・後継者に望むこと】
 自分が役職についたときから、自分のひとつふたつ上の役職者の位置にいるつもりで物事をとらえるように意識して欲しいのです。係長であれば、課長や部長の立場に身をおいて考えて欲しいのです。部長であれば取締役、あるいはトップの立場に身をおいて、その当事者がどのような思いで意思決定をするか、当事者感覚で物事を見て考えて欲しいのです。
 個人レベルの発想では、問題を提起しているようでいても、上位者から見ると単なる不平や愚痴に過ぎない場合が結構あるものです。大事なのは組織において正しい発想かどうかです。上位者の視点にたち(創造経営では「代理観」といっています)、モノを見て考える訓練をすることにより、会社の取組の真っ当さに気づいたり、前向きな理解ができたりするものです。
 それから徹底して考える癖をつけましょう。これには今でも私は苦労しています。表面で流して後悔することの多いこと・・・トヨタ生産方式の勉強をすると、必ず「何故を5回繰り返せ!」とありますが、常に問題を掘り下げ、かつ自分を客観視することは結構難しい作業です。だから他人の目や意見を素直に聞く姿勢も欠かせません。
 良い管理者のいる所では、能力のある部下が残り、優秀な組織を作りますが、無能の管理者が上にいると、辞めて欲しくない人材から順に辞表が出て、できれば辞めて欲しい人が残ってしまうものです。お客様企業を見ていると、多くの管理者は部下の短所と自分の長所を比較して、まだ力不足と言う傾向が強くあります。力不足という部下より若い時期に、ご自身が今の地位や職責を任命されたにもかかわらずに。年齢もキャリアの違いもありながら、自分の長所と部下の短所を比較しては、常に自分が勝って部下が愚かに見えてしまいます。これでは部下の優れた能力を引き出せるわけはありません。
 組織というのは一人仕事ではありませんから、補完関係を考えるなら、比較をするなら自分の短所と相手の長所にすべきでしょう。自分が反省し、改善すべき課題を見ないで、部下が伸びる訳はありません
 管理者は「組織の連結ピン」とも言います。乱暴な言い方ですが、組織のメカニズムを考えると、部下に厳しいことも言うし、同じくらい上司やトップにも現状に対する苦言を呈する役回りのできる管理者がいる組織は強くなります。どちらからも苦手と思われるでしょうが、信頼はされている人のはずです。現実の現場では、誰にでも良い顔をして、いつも物事は済むものではないでしょう。

【マーケティングの視点から】
●売上=延べ客数×1回の客単価・・・小売業や飲食店ではこのような基本公式を使います。
難しいことは単純に考えると良いといいます。売上を上げるには、お客様の数を増やすか、一回当りの客単価を上げるしかありません。その上で、この公式を少し分解しましょう。
①延べ客数=(新規客数―流出客数)×購買頻度
②1回の客単価=1点(品)の商品単価×1回当りの購買点数
 すると、次のような対応方法が見えてきます。
1)新しく買ってくれるお客様を増やす。
2)来なくなってしまうお客様を減らす。
3)お客様の来てくれる回数を増やす。
4)商品の値段を上げる。
5)たくさん買っていただけるようにする。
 売れなければ始まらないわけですから、私達が日々懸命に努力する仕事は、これらの5つにつながっていなければ、売上のアップには至らないということです。中小企業が大切にすべき点は、2)の来なくなってしまうお客様を減らすことと、5)たくさん買っていただけるようにする人間関係を作ることがベースではないでしょうか。そのための商品戦略、差別化、競争戦略へと展開していかないと、持続力はついていかないでしょう。

[ 更新:2007-01-04 18:23:32 ]

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