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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信 9月号から

【趣味:音楽 札幌ジャズ・フォレスト(SJF)】 【現代日本法史:岩波新書】 【権利の濫用:末川博著「法と自由」より】 【トヨタ自動車北海道 田中 義克社長の講演から】 【エイベックス㈱ 加藤明彦社長の講演から】 【貢献意欲:働くこと】

【趣味:音楽 札幌ジャズ・フォレスト(SJF)】
(1)ジュニアの成長
 8年前よりこのSJFのスタートとほぼ平行して小学生に「音を楽しむ場」としてジュニア・ジャズ・オーケストラが誕生しました。その後、中学生のメンバーによるシニアグループも誕生しましたが、昨年より「いい演奏をする子がいるね。」というプロの声が聞こえ始めておりました。今年の3月にバークリー音楽院のタイガー大越氏らの教授陣が札幌でジャズ・クリニックを行い、その受講生のSクラスメンバーの演奏がありました。そのグループ4名の年齢合計がなんと67歳、中学生のサックスが13歳(女性)、ドラムが14歳(男性)ですが、見事な迫力ある演奏でした。よき指導者の下に真摯にスキルを磨き続けると、わずか数年でこれほどの成長が実現するとういう事実を謙虚に受け止め、企業の人材育成に応用していこうと思いました。
(2)ジョー・ザビヌルと彼のシンジケート
 ジョー・ザビヌルというと、1970年代にウェイン・ショーターと結成した「ウェザー・リポート」を思い出す人が多いでしょう。私も評判の高かった「8:30」という2枚組みのライブ・アルバムを買いました。8:30とは、当時のアメリカでのこのライブの開演時間だそうです。この当時のメンバーは、エレキベースにジャコ・パストリアス、ドラムにピーター・アースキンでした。ベースのジャコ・パストリアスは、エレキベース奏法を一新させたとも言われ、マーカス・ミラーは子供のころからジャコの演奏を聴き続けていたそうです。
 ジョー・ザビヌルも今年74歳(でも当然ながらはるかに若く感じます)、パーカッション3名、ギター、ベース、ドラムにご自分のキーボードと7名編成でのステージでした。カメルーン出身のベーシスト、リチャード・ボナも彼に見出され世界に名を広められたそうですが、テクニック豊かな若手を引き連れてきました。演奏中は指揮者を見て演奏するクラシックのステージのように、メンバーは常にジョー・ザビヌルを注視し、彼の指示で順次アドリブを展開して行きます。ジョー・ザビヌルのトップとしてのカリスマ性と追求する音楽のイメージに妥協を許さない姿勢がビンビン伝わってきます。これは中小企業経営のトップが見習うべきものですね。
この緊張感と大音響と当日の33度を越える野外の暑さもあり、翌日は疲労感いっぱい。野外JAZZは良いけれど、長時間のステージは聴くだけでも相当疲れるものと、自分の年齢を再確認しました。

【趣味:音楽 ★東儀秀樹とBAO★】
東儀秀樹と中国音楽の若きミュージシャン達とのコラボレーション。上海へ渡り本人自らがメンバーをオーディションし、そこで出会った才能溢れる若きミュージシャン達「BAO(中国語で"黒豹の意")東儀が命名」。上海音楽院で幼い頃から特別な訓練を重ね、超絶技巧をこなすエリート達です。中国古楽器(笛・琵琶・二胡)の個人演奏では、昨年に引き続き見事な演奏を聞かせてくれました。静寂、躍動、透明感、悠久な響き、ぬくもり、元気、そして楽しさと、ライブならではの感動です。中国の古典曲では、行ったことはありませんが、中国の情景が見えるような印象を与えてくれます。スキル磨くことへのこだわりは、専門職として参考になることがたくさんありました。
日本でもBAOのメンバーのような技巧や心を持った若者がたくさんいると思います。7月中旬に若手ギタリストの村治奏一さんのコンサートに出かけました。お姉さまもギタリスト(村治佳織さん)でスペインのロドリーゴに認められたことで有名です。弟の奏一さんは、現在アメリカの音楽大学院に留学中とのことですが、コンサートホール・キタラの小ホールにギターの弱音まで繊細に響かせ(ギターの音量は決して大きくないので、大きいホールや響きのいまいちのホールでは、マイクを使わないクラシックギターの音が座席で聞こえないことがあります)、アンコールは超絶技巧の南米の曲なども演奏され、今後の成長が実に楽しみと感じさせてくれました。経営の現場でも、前向きに努力できる若手の成長を支援していきましょう!

【現代日本法史:岩波新書】
今から30年前に出版されたこの本を読み直してみました。そして最近の日本ととてもよく似ている、と驚きました。戦後の日本の対米従属と国家と独占資本の癒着の政治構造を、法学者の視点で法史の連続と断絶を説明しています。日本列島改造論の役割を、「過剰資本に悩む大企業に、土地投機という非生産的投資による利潤獲得の手段を与えた。」とし、平成バブルをほうふつさせます。1960年台を「農業の犠牲において工業の発展を図り」とし、最近の一般国民(特に若者と高齢者層)の犠牲のもとに大手企業の(特に金融機関)再生を支援した姿とダブります。石油ショックでは、「大規模な政府資金の散布と外貨=ドルの流入によって大企業のもとに大量の資金が蓄積され『過剰流動性』と呼ばれる状況が作り出された。大企業は過剰な資金によって土地投機から商品投機へと進み、買占めと価格吊り上げによって暴利をむさぼり、この傾向は石油ショックによって一挙に加速され、人為的に作り出された『狂乱物価』と『物不足』は・・・」と表現し、雇用問題では「70年代に入って・・・『高賃金の抑制』と既存労働力のいっそうの流動化が不可欠の条件とされた。」とあり、最近の世相(フリーター、ニート、若年失業や派遣労働者の給与等の待遇)を思うと悪寒を感じます。「法律は支配層の政策の実現手段として策定され、適用され、改廃される。」わけですから、選挙権は大事に行使したいものです。
人間とは同じことを繰り返すものなのですね。歳月は記憶を薄れさせ、喪失されますが、家系調査により「良いことはもっと良くし、悪いことは改め、同じ過ちは繰り返さない創造者になろう!」という創造経営本部の教えの意義深さを再認識させていただきました。

【権利の濫用:末川博著「法と自由」より】
これも古い本です。私が生まれた昭和29年に岩波新書で初版、以後私が大学に入るまでほぼ毎年版を重ねた本ですが、何気なく読み直しました。ライブドアや村上ファンド事件の「法に触れなければ何をやっても良い。」とする風潮に違和感を抱いていましたが、当時私は次のように法律を学びました。憲法第12条で国民に保障されている自由及び権利について「国民は、これを濫用してはならない」と定められ、民法の第1条第3項で「権利の濫用はこれを許さず」と定められています。基本的人権であっても「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任がある」ことを明確にしているのですが、「公共」が最近は忘れ去られているのかもしれません。大学の恩師の野阪先生は「クリーンハンドの原則が軽んじられているのかね。」などとコメントされておりました。
本書では、「封建制を打ち倒して出現した近代国家は、全ての社会関係を個人を基点とするところの法律関係すなわち権利関係として取り扱い、しかもあらゆる人間行動を法によって律するという建前をとるところの法治国家として現れるに至ったために、法によって認められる権利は絶対であって、その行使は常に法に適合するものとして社会的に是認されねばならない、というような考え方を確立するに至ったのである。」と述べた後、「権利者と他人との『相対する利益の均衡の破壊』、権利者における『適法な利益の欠缺』、権利の相対性に立脚して権利の『経済的・社会的目的への背反』などを権利濫用の標識として考慮されても良いだろう。」として「信義・誠実の原則」の重要性を説かれています。今を生きる上で大人としてしっかりした倫理観が必要なことは、この本の書かれた50年前と何ら変わらないということですね。

【トヨタ自動車北海道 田中 義克社長の講演から】
 中小企業庁委託平成18年度高等専門学校等を活用した中小企業人材育成事業の「これからの自動車産業を考える」講演会がありました。田中社長はトヨタ自動車の歩みと今後の展開と、トヨタ生産管理システムについて2時間の講演をされました。製造業以外でも応用できそうな点、印象に残った点を私の解釈で紹介します。
①トヨタでは、機能性の追求と熟練による作業のスピードアップの仕組を追求しています。中小企業にコンサルタントとして関わるとき、機能性の追及とは何か? 熟練していくとはどういうことか? どうしたらスピードアップできるのか? なぜ今スピードが遅いのか? などが明確になっていないことが良くあります。また、スピードの早い遅い、の測定方法と記録の仕方、記録の開示の仕方やそのシステムが無い、あっても機能しない、システムの活かし方が分からない場合も多々あります。改善する場合、まずここから整備していく必要があります。
②アメリカの過去の「考える人」と「実行する人」を区分する二元論的な考え方を「敵対関係」と表現され、敵対関係はいつか破綻するとされました。それと「自己防衛(守り)」は、敵対関係があるからと話されました。創造経営でいう、「対立」ではなく「合一」を目指す、という考えにつながります。
③「モノつくりは人つくり」から、最近多忙、人手不足、欠損を理由にQCサークルが休止される事例に対し、逆に継続すべきとされます。それは、QCサークルでチームリーダーが育つからだといいます。ベテランが若手に教えることで相互に成長するという「場」がQCサークルだから、任せられるリーダーの育成が必要で、階層別の教育、専門技能の習得としてのOJTやOff-JTとリンクして運営しよう。QC活動のためのQC活動では、限界があるということですね。
④トヨタでは、「標準を決め、標準を外れたものを異常とする。異常が見えるようにする。異常で止まる仕組みを作る。人がする仕事と機械がする仕事を分離することを自働化という。」と表現していますが、これは創業者である豊田佐吉氏の自動織機製作の「心」である、「品質にこだわるから、不良品を作らないために、異常があれば止まる。」から来ていることを知りました。
⑤ジャスト・イン・タイムも、豊田英二氏と大野耐一氏の、「資金・資材の乏しさを新しい生産性の向上で克服しよう。」と「人は苦しむと知恵が出る。」と言い聞かせ、「当たり前のことを当たり前に愚直に取組む。」ことでトヨタの成長要因としてきたことも話されました。

【エイベックス㈱ 加藤明彦社長の講演から】
(1)経営資源は、「人・物・金」というけれど、これらは均等ではなく「人」が最大の資源です。人は面白いもので、きちんと向き合わなければ何を考えているのか分かりません。ですからきちんと向き合いましょう。人の一生における、その人の成長が、会社の成長と発展につながります。
(2)社長(トップ)が決断(意志決定)を要する最大の仕事(経営戦略)は、「人材投資」(人事権)と「設備投資」(資本権)です。人材確保における採用は、「人材投資」の入り口です。私はトップとして自ら、自分の考え方と我社の将来を、採用段階で語ります。最近採用決定後は、入社前に新入社員教育の基礎が終わっているように仕組んでいます。
(3) 社員の問題発見能力を磨きましょう。見える問題は過去に原因があります。見えるようになった(顕在化された)問題は、すぐに改善すればいいことです。もっと大事なことは、「潜在化された問題」を見つけ出すことです。そのためには、我社のあるべき姿、ありたい姿(未来や理想)を明示し、その目標を共有し、それと現在とのギャップが「潜在化された問題」です。これを改めることを「改革」と呼んでいます。「改革」を成功させるには、複数の人が、職制を通じ、他部門や関連する部署を巻き込んで取組むことが効果的です。
(4) 「問題解決能力」を高めるには、①プラス発想をする、②決め付けや先入観を排除する、③目指す方向、ゴール、目的(何のために、なぜ)を共有しなければうまくいきません。
(5) 顧客からの信頼は、我社の存在価値をどのように認めてもらえるかということになります。そのためには、人間尊重の経営が大事ですし、会社の持続性のためには、ある意味で経営者も社員も対等といえます。

【貢献意欲:働くこと】
現在仕事で関わりをいただく企業で、黒字を維持できる企業、あるいは赤字に転落してもすぐに黒字転換できる企業の経営者は、モチベーションが非常に高いという共通項があります。それに社員に対する愛情、優しさがあります。しかし盲愛ではなく、社員の意欲と能力を冷静に見極め、それぞれの社員をその社員のレベルで機能させよう、活かそうとされています。期待過剰というのはまずありません。ご自分の体験から経営者各人なりに、期待をかける期間を1年とか3年とか区切っています。その上で、トップの期待に応えようとしない人(気づけない人)、応えようとするが努力をしても実力が伴わない人は、他の社員のモチベーションを下げない処遇に落ち着かせるノウハウを持っています。後に本人が本当に目覚めた場合、敗者復活の道も提供しています。
それから、何らかの社会貢献をされています。自分に対して、家族に対して、取引先に対して、銀行に対して、地域に対して、ご自分の属する業界に対して、均等ではありませんが何らかの貢献を意識し、持続されています。当然、その対価(リターン)も手にされています。関係する人たちにどのように貢献すると、会社により多くの価値(利益)を生み出せるかを常に意識されています。
平行して経営者としての資質を開かせるために、各人なりの「学びの場」を持っていらっしゃいます。読書であり、同業者や得意先からの情報収集であり、趣味であり、会合であり、いろいろな機会を学ぶチャンスとして無駄にされていません。期待はずれの場合も、反面教師としても有効に利用されています。そして、良いと思ったことは会う人に必ず自分の言葉に出して伝えます。その言葉に私もたくさん教えられ、私も真似をして関わる方に紹介させていただいております。
最後に、気分転換がとても上手です。仕事と休養の境目が無いように感じさせる経営者もいますが、皆さん仕事と全く別のことを考える時間と空間を定期的にお持ちです。見習いましょう!

[ 更新:2006-09-02 10:29:20 ]

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