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割れ窓理論と基準行動

苫小牧市の食肉加工会社の事件では、事業者としての倫理感についていろいろ考えさせられました。「割れ窓理論」も参考にしましょう。

アメリカで考えられた「割れ窓理論」というのがあります。「建物の窓が壊れているのを放置すれば他の窓もまもなく全て壊されるだろう」との考え方からこの名があるとのことです。
「割れ窓理論」では治安が悪化するまでには次のような経過をたどるとします。
① 一見程度の軽い違反行為や、また違法とは言いがたい無害な秩序違反行為が野放しにされ、黙認されると、それが「誰も秩序維持に関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出し、軽犯罪が起きやすくなります。
② 住民の「体感治安」が低下して、秩序維持に協力しなくなり、さらに環境を悪化させます。
③ 凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになります。

 これを函館大学専任講師の金山健一先生は次のように学校に当てはめています。(月刊学校教育相談2006.11月号35ページ)
①校内での盗難や校舎の破損が起こったとき、教師が解決策を取らずにいると盗難・破損が多発します。更にエスカレーションとゲーム化が起こり、いじめ、授業のサボりも起きやすくなります。
②生徒たちにルールを守る意識が低下します。特に教師が一般生徒には注意しますが、非行生徒には注意できる状態ではなくなり、生徒指導の基準のダブルスタンダード化が起こり、一般生徒からの信頼も失います。そのために保護者・地域からも信頼を失います。
③対教師暴力、教師への暴言が日常の学校の風景になり「学校崩壊」へ向かいます。その荒れた学年が卒業しても、次の学年が同じ状況をまねし、学校の崩壊は継続します。

ここの学校を企業、教師を経営者、生徒を一般社員や新入社員、保護者・地域を取引先と置き換えてみるとどうでしょう。企業にあっても秩序維持、基準行動の目指す「当たり前の事を当たり前に行うこと」の重要性が再認識でしますね。
私はビジネスの世界では些細なことが大きな差につながると信じます。飲食店の客席テーブルの上の調味料や割り箸置き場スペースが散らかっていれば、顧客はその企業全体が衛生面を軽んじていると思い、食品そのものの質まで不安視するようになるでしょう。高級専門店に入ったものの邪険にされたら、例えそれがたった一人の店員の対応であろうとも、顧客はその店の社員教育が期待したほど高くないと感じることでしょう。
ここでは、ハインリッヒの法則(1:29:300)が参考になりますね。ハインリッヒの法則とはアメリカの技師ハインリッヒが発表した法則で、労働災害の事例の統計を分析した結果、導き出されたものです。数字の意味は、重大災害を1とすると、軽傷の事故が29、そして無傷災害は300になるというもので、これをもとに「1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景に、29件の軽傷事故と300件のヒヤリ・ハットがある。」という警告として、よく安全活動の中で出てくる言葉です。
ですから問題が雪だるま式に膨れあがっていくような具体例があるなら、必ず検証し、いったん傷がついたときの修復方法を企業のノウハウとしましょう。もう一つ、問題が発生する過程を知って、最初の兆候が現れたときに、できるなら現れる前に、問題を確実に食い止めるリスク管理スキルを身につけることも大切です。小さなことですが、例えば、北海道では5月以降は毎週社屋周りの草むしりと清掃をすると決めておけば、今年はどうしようかなどと迷わなくていいことになります。

[ 更新:2007-07-07 11:31:51 ]

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