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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信2008年12月号(61号)より

【組織:環境対応】 【アメリカ型の強み】 【成長するとは・・・:船井幸雄氏の本を参考に】 

【組織:環境対応】
 企業文化はその会社での仕事の進め方に現れる。特に企業理念はその会社の最高の信念だ。強い信念は注目されるが、弱い信念は無視されやすい。中小企業でも固有の企業文化は必ずあり、その共有が組織の結束力を強めている。アメリカ発の金融不況が世界の実体経済に影響を及ぼしはじめ、じわじわと閉塞感が強まっている。今年の9月の来道者数は123万人だが昨年より5.2%(6万7千人)も減っている。台湾からの観光客も景気の悪化でチャーター便でも客が集まりにくくなっているとの新聞報道だ。1~10月累計の道内倒産件数は約400件で昨年同期を30件以上増えている。北海道の中小企業近代化資金貸付事業は半年前の3月で91億3千4百万円も返済が滞納しているという。
こうなると上に立つものはまずヤルしかない。憎まれようが何だろうが乗り切る覚悟で、倒産しないために指示命令を発し続けなくてはいけない。「愛情を必ず持て!」と言うが、最近は年代に関係なく感謝の心が薄らぐ傾向が見えるし、してもらって当たり前という人も増えつつある。無理をしたくないから時には逆恨みする者までいる。立派な有難い社員も多数いることは事実だが、組織はかような多彩な個々人の集合体だ。個人の価値観が個人の行動様式を決め、個人レベルでの経済目標の選択をするのだろうが、緊急時に個人の価値観にいつまでも会社が合わせていられるのだろうか。
 私が子供の頃の1960年代の日本は貿易赤字の状態で、金融引締めに公共投資の抑制、輸出振興政策が取られていたのだから現在の政策とは大違いである。世の中は常に変化している。昨年からの資源高に続き、実体経済の縮小、株価や為替の乱高下という昨今の環境変化にあって、中小企業もトップを中心に自己変革が必要だ。困難に対処するのだから、急に厳しくなるのだから、試練に向き合わなくてはいけないのだから、当然社員に抵抗はある。トップを中心に不屈の努力で、環境適合できるように新たな能力を習得し、生きる力、働く力をたくましくしていこう。一般社員の目の前の取組は、トップを信じ、まず勤勉と節約だ。時間とお金を浪費しないことだ。さらに今回をチャンスとして、時間とお金を有効活用することに徹底してこだわり、正直に生きて、正直に働くことだ。私達の先祖は、自然の厳しさに対し相互に助け合って生き抜いた。その経験を今回の厳しさ克服に活かそう。

【アメリカ型の強み】
自分で自分のことは分からないこともある。だから他人の意見に耳を傾けることも必要だ。美しい自然な動作は、頭で意識して簡単にできるものではない。「千日の稽古を鍛と言い、万日の稽古を錬という」ように、スポーツでもお稽古ごとでも自然に美しく身体が動くようになるには、長期の繰返しのトレーニングが必要だ。知識や知恵も同様だが、最近単なる知識だけの価値はますます下がっている。最近では身につけることが難しい能力の価値が高まっている。
米国型の強みは、目標を定めて競争をする時、新しい記録達成に努力する時のパワーによく表れる。過去の日本のように規制が強まると不自由さは増すのだが、規制によって想定された平等が維持されるから、競争をしたならば敗者となる人達も生存が可能となる。ここ数年のように自由競争原理が強まると、適者生存原則が前に出るから、競争の結果は不平等となる。格差も生じる。ここではスタートの機会が平等なら、出発地点が同じなら、結果の不平等は個々人の能力の反映なのだから、誰も文句を言う筋合いはないだろうという理屈だ。
我国では戦後芽生えた公共の福祉概念が、高度成長期頃から権利として強調され、国もゆとりがあったからだろうが「結果の平等」の主張が受入れられ、保護されるようになってきていた。最近ここに課題も持ち上がっているが、ここでは触れない。日本型が良いとかアメリカ型が勝るとかいう二者択一のように短絡的な選別ではなく、これからの中小企業は、本当に良いものを見極める能力、いいものをつなぎ合わせる能力、いいものを調和させる能力を磨いていこう。中小企業の留意点は、経営規模によって人材育成モデルを変化させること、良い方法を学んだからといってすぐ飛びつかず、うまく行っているときにはその循環をあえて変えないことも大事だ。

【成長するとは・・・:船井幸雄氏の本を参考に】
 創造経営の用語は難しい、理解しにくいと言われることが多いので、私は船井総研の船井幸雄氏の本を結構読んでいる。著書の言い回しや事例が参考やヒントとなることが多いからだ。船井氏の本を久しぶりに読んで自己成長を改めて考えてみた。
 固い表現となるが、仕事とは経済活動(物資の生産・消費・交換・分配の循環)と付加価値の創造活動(買値より売値が高くできること)、6種の利害関係人(ステークホルダー)との調和(関わる人との利害調整)に自分自身の精神活動(意志、価値観、感情)という連鎖の中で営まれている。およそ40年の職業人生のキャリアの歩みで、これらの状況判断能力と対処応力が高まることが人の成長であるし、一般社員から経営者への道でもある。表現を変えると、①売上を維持し伸ばす能力、②経費を管理統制し利益を生み出し、資金化する能力、これらの力を自分の力とした後は、③部下や後輩にその能力を引き継がせる(部下育成)ことでもある。
 若い時には意味も分からず、全く歯が立たないことばかりかも知れない。苦手意識から敬遠して後送りしてきたことも、時が来て自分に力がつき、問題が具体的に解決できるようになると、過去の問題がもう問題ではなくなり、あまり悩むことなく対処できるようになる。これが成長の証だ。
 「~してくれない」という受身思考の社員、「私にはできない」「私には力がない」という弱者思考というか敗者思考の社員もいるだろう。お客様企業を見て、30歳・40歳・50歳を超えて、リスクを取らないし責任もとらない生き方や働き方の人は、多くは過去に実力が止まったまま(固まったまま)であるから、今後は地位も給与も幸福も手に入らないだろう。幸せになりたいのなら、それなりの努力が求められる。
 自分の過去を振り返って思うに、知識もない・経験もない・度胸もない若い時期は、受身思考・弱者思考・敗者思考の時期があっても仕方がない。しかし中年以上の年代となり、背後に家族がいるのなら、大なり小なり常に一歩踏み出そう。人生も仕事も勇気を持って開拓するものだ。もしも、自分の職場に努力の甲斐が全くないというなら、会社や居酒屋で不平や不満を言うのをやめて、潔く転職すべきだ。そのような人が社内にいるのは、トップにも職場仲間にも迷惑なだけだ。
 私たち人間は肉体も心も、「早送り」も「巻き戻し」もできない。一度きりの人生をひたすら歩んでいる。寿命までの残り時間は増えることはないし、いつまであるのかも分からない。だからこそ、真剣勝負をする時は、逃げずに真剣勝負をすると躍動できる。ファッションデザイナーの三宅一生氏は7歳で被爆し母親を亡くしたという。焼け野原から復興する広島で育ち、「何があっても人間は生きていくものだし、生きていかねばならない」との確信を抱き、「もっと人を元気づける文化と、それをよりどころに光を見つけること」を目標としたそうだ。私たちも、身の丈に応じた真剣勝負もできるし、身の丈の応じた関わる人への貢献はできる。

[ 更新:2008-11-30 17:12:43 ]

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