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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

読書:「愚の力」大谷光真著 文春新書

この本を昨年暮れにお客様からいただいた。出張の時に移動のJR車内で一気に読んだのだけれど、簡単に読み流す内容ではないと思い、最近やっと読み直した。

 昨年の事務所通信では、皆様に私が読んだ養老孟司さんの本から色々ピックアップして、現在の世代の差と地域の差についての考え方をお知らせした。今回は、宗教家である大谷氏の今の時代と人の生き方について書かれていることで、マネジメントの場でもとても役立つと思うものをご紹介する。興味ある方は、是非この本を手にとって読んでいただきたい。以下は本文からの抜粋と吉見の要約である。
  
 今の時代は方法論が前に出る時代。「どうすればいいのか」「これは上手くいく」というキャッチボールがスピーディにいくことが求められている。唯物論的、実証主義的感覚が強い。
*唯物論とは、物質が世界の主体であり、精神現象はここから派生したという説。実証主義は、事実のみを根拠として理論や意見の正しさを証明証とする立場。(実用国語辞典 永岡書店より)
 
 死んだらおしまい、何もなくなるのだからと言って、今の自分にこだわり、「自分探し」や「自己実現」にこだわり、「今のうちに、自分のために」欲望を優先させる人が増えている。人間というものは愚かな面があり、色々な欲望もあるが、誰もが必ず死に至る。今持っている学歴や肩書なども、死と共に役立たなくなる。であるならば、自分の原点を見失うことなく、自分の後生(死後の世界)を想像しながら、自分のいたらなさを素直に認め、自分の限界も認め、弱い自分を認め、自分の人生を全うするのはいかがだろうか。
 最近の消費マインドに関しては(以下引用)、「大人でも子供でも、お金を払いさえすれば客として平等に店員から接遇されます。老若男女を問わず千円の買い物をすれば千円の買い物をする客として扱われます。本来なら子供は社会的に未熟な人間なのに、親からもらったお金を使い、苦労して稼いだ大人と同等に扱われます。…このような消費マインドは、子供たちの人格形成にどんな影響を与えるのでしょうか。この商品がどうしてできたとか、どこを通ってきたかに関心を示さなくても、お金さえ出せば誰もが消費者になることができます。いのちの問題はますます見えにくくなります。『後生の一大事』が見えなくなるのです。」(引用終了)
 現代は胸の内に芽生えた攻撃性が、近くに居て自分が反撃されないものに向けられる。家族や、力の弱い人あるいはおとなしい人に向けられる。ネットや携帯電話は、画面の上だけの情報であり、いくら奥行きがあろうとも見たくないものは見なくてすむ道具であり世界であるから、見たくないものはこの世に存在しないという態度ができる。
 この世は苦であり、皆何らかの苦を抱えている。人生は始めから終りまで凸凹道である。苦の原因は、私たち自身の無知、欲望、執着(煩悩)にある。自分の問題を横に置き、世の中が悪い、あいつが悪い、私は何も悪いことをしていない・・・という言動では、良い方向には進まない。

[ 更新:2010-04-02 09:50:51 ]

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