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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信 2007年11月号より(第48号)

【駒大付属苫小牧高校 前野球部監督 香田 誉士史氏の講演】【忘れる社会】【家庭:故 斉藤茂太氏の本から】【ビジネスと合理性:自律者】【幸福:共通目標】

【駒大付属苫小牧高校 前野球部監督 香田 誉士史氏の講演】
 中小企業家同友会の全道経営者“共育”研究集会が苫小牧で10月19~20日と行われ、私は初めて参加しました。記念講演の講師は駒大付属苫小牧高校 前野球部監督 香田 誉士史氏、「夢追い続ける」と題して初めての講演経験とのことでしたが、とても正直に朴訥にこれまでのご経験をお話しいただきました。香田氏は母校の佐賀商業高校に行く予定を、命令で苫小牧とされ、赴任期間2年の約束も早々に反故にされることから始まったそうです。平成7年に赴任当時の野球部は、グラウンドは荒れ、きちんとした挨拶もできず、ユニホームの着方もだらしなく、キャッチボールも満足にできず、苫小牧の若いヒグマをイメージしてきたのにこれではアライグマにもならないという印象だったそうです。野球部員を勧誘に中学校へ行っても、面会約束はすっぽかされ、駒大岩見沢高校と間違われ続け、悔しさをばねにすることの連続の実体験を淡々とお話しされました。
 周りの人に好かれるようにと願いグラウンドを整備し、気持ちよく試合を見てもらえるように部員にはきれいにユニホームを着て、正しい言葉で挨拶をすることから始め、ご自身は甲子園出場し優勝することの夢を持ち続け、指導者としての高いレベルの勉強を試行錯誤で続け、心理学まで学び、自分の誤りに気づいては生徒に素直に詫びてきたそうです。できないと思うと発想が浮かんでこないから、常に発想を豊かにすることを意識し、指導者として安易に妥協しない姿勢を貫き、選手の意識づけや感性を磨くことに努め、バットは投げ捨てない、帰塁はダイブ、全力疾走というルール決めと実行から始め、選手が自分の頭で考えるよう、試合中の選手同士の自発的な意思疎通ができるように、選手の話を引き出す、聴く、認める、尊重する、誘導するというコミュニケーションンに長い時間とエネルギーを注いだことをお話しされました。その間、葛藤は実にたくさんたくさんあったようです。
 「継続すること、夢の実現への熱い思いを持つこと、お前を育てたいというスタンスで接することの結果が3年連続決勝進出の結果となったようだが、合理的な因果性は自分でも分からない」とまとめられました。私は企業経営の現場と全く同じと思い、聞き入っておりました。香田氏の行動モデルを、私たちも取り入れましょう。(この講演要約は吉見の個人的な記憶と印象によります。)

【忘れる社会】
 私の生まれた芦別市は昭和38年当時人口4~5万人、自宅のある苫小牧は現在17万人、事務所のある札幌市は185万人です(正確な人口統計にこだわる方は個別にお調べ下さい)。都市人口が多くなり、大型都市になっていくにしたがい、周辺人口が都市に吸収され、人々は以前と比べ自由に職を変え、多くの人に会い、いろいろな状況に適応することが求められるようになっています。次々と直面する場面、場面において、違った仮面が必要になる人も増えているようです。IT技術の発達が社会変化のスピードを非常に加速させています。こうなると、過去のことをたくさん覚えていることが難しくなります。忘れることが早ければ早いほど、新しいことに溶け込みやすいのでしょう。過去を覚えているよりも、どんどん忘れることの方が、周囲に合わせて生きていくことや暮らすことが簡単なのかもしれません。北海道の過去130年余りの歩みもそうだったのでしょうか。北海道では、自分の3代前、4代前のことが忘れるのではなく引き継がれない、申し送りされていないことが多い印象を受けます。
 現代の超多忙な働く人たちに対する危険は、最後には自分は誰で、どのような家系史を持ち、どのような果たすべき責任を持つのかも忘れてしまうことではないでしょうか。創造経営では「人は誰でもその人にしかできないことがある」と教えています。「親先祖のやり残したもの、自分への宿題を片づけよう」といいます。自分のため、関わる人たちのために、自分史・家系史の中から、自分の良さ、強みを見出して、磨き続けましょう。

【家庭:故 斉藤茂太氏の本から】
 かなり前に読んだ故斉藤茂太さんの本(書名は「中年から生き直しのできる人できない人」だったように思います)に書かれていたことを、思い出してお知らせします。この世には多数の人が生活しており、その人たちは年齢も、世代も、社会的地位も違います。企業では上司・部下・先輩・後輩があり、それぞれが感情を持ち、欲求を持ち、プライドを持ち、不平や不満を持ち、優越感も劣等感も持っています。先輩や上司(家庭にあっては父母や兄姉)は、長い時間をかけて培った「経験」を、後に続く者に伝える責任があり、その集団の一つとして「叱る」という行為があります。特に営利を追求する会社組織は、ある意味「甘え」を許さない人の集まりですから、「叱る」場面はどうしても必要です。それゆえ、些細なことにも一生懸命に、全身全霊を傾けて働くことも求められます。
 そのような中で生きるのですから、心のバランスを保つ上で、仲間(家族)との連帯感の中に自分を戻し、孤立感や悲壮感を和らげることは大事です。身近に心を温めてくれる人を持ちましょう。その基本集団が親子・夫婦の集まる家庭です。たとえ夫婦間で感情的な対立があっても、「これまでと違った見方もあるよ」とのメッセージです。そのような還る家を大切にしましょう。
 
【ビジネスと合理性:自律者】
 ビジネスで成功するには、次のように経済価値(モノ金)を把握するようにと教えられます。
①算盤勘定としての「機会損失の把握」をしよう。せっかくのチャンスを見送ったことにより、得られなかった楽しみや受け取れなかった金銭の額を把握しなさい。この儲け損なった悔しさをばねにしなさい。特に大衆を相手にするビジネスは、客数を増やさない限り会社は成長できません。売上の減少は、大事な客数が減っていることの表れです。
②自分に、あるいは会社に何が重要なのか、明確に知りなさい。自分にとって重要なものが何か分からないと、せっかくのチャンスに気づけないでしょう。
③より良いものをチョイス(選択)できるように、メニュー(選択肢)は多く持とう。
④遠慮せず、自分にとって一番いいものをチョイス(選択)しよう。
 これを企業経営管理の場面に当てはめると、「徹底して合理的に考え、企業全体のシステム(仕組み)の生産性を上げること」となります。ここでいう「生産性」とは、「企業にとって解決すべき諸々の課題にしっかり取組み、期待する効果(実績)を上げること」となるでしょう。当然、現在ある資源を無駄にすることは許されません。人的資源と言われる人に対しても、新たに能力開発を行い、その能力を有効活用しようとします。これが極端に強調されたのが成果主義賃金制度かもしれません。ここでは、「企業は賢くタフな人の集団であるべき」というべき論が強調されます。
 このような経済価値や合理性から人間をとらえることに、違和感をお持ちの方も多いでしょう。ただ、年功型賃金制度が崩れ、国家財政のほころびから社会保障(医療保障や年金受給)制度の現在の秩序維持が困難となった現在、中小企業に働くものは、経営者も社員も、40年余りという長い職業生活期間、地道で厳しい努力を、あるいは平凡なことの積み重ねをしつつも変わり行く時代の要請に自分も企業もマッチさせていかなければ、生き残りにくいことは事実でしょう。足元も遠くもシッカリ見る必要があります。 創造経営システムでは、このような人材を「自律者」と名づけ、各企業に働く人の3割がこのような意識を持たれるよう、人材育成支援を行っています。工業製品を作るわけではありませんから、実務上の人間育成はなかなか大変です。時間も費用もある程度投資が必要です。
なお、自律者は次のような前向きの人です。きっとあなたのような人でしょうね。
①自ら目標を立て、それをやり切る人。
②現実に満足せず、常により良いものを求める人。
③困難や問題の解決に自分から挑戦する人。
④常に自分の成長を求める人。
 皆さんも、期待される人材としての「自律者」を実践してみて下さい。お願いします。

【幸福:共通目標】
 私の使う国語辞書では、「幸福とは、不安や心配がなく、十分に満ち足りること」とあります。ですから、「幸せとは満足の大きいことですね」と発信すると、一部の方から「モノ金が不自由では幸せとはいえない」という反論も返ってきます。大量生産・大量消費の近代社会では、「物財の豊富さが幸せ」と信じられているのでしょうか。確かに物・金の多さは目に見えますし、経営努力や働きの成果が客観的に測定され分配されたという意味では科学的なのかもしれません。
 それに対し、満足の大きさとなると、主観的な側面が強くなります。社会観や人生観の影響もあるでしょう。
 私の親の世代は、「貧しさは豊かさのもと」「失敗は成功のもと」として、我が国敗戦後の混乱期を何とか復興しよう、立ち直そうと活路を求めてそれぞれの立場とレベルで暗中模索や試行錯誤を繰り返し、経済成長と企業の豊かさと個人の豊かさを求めて懸命に働いてきました。多くが直接・間接に戦争を知る世代でした。
 今の我が国も企業も、戦争を知る世代、戦争があったことを身近な人から学んだ世代、戦争があったことを知らぬ世代が同居している状況です。多様化する価値観の中で共通目標をどのように掲げ、共有していくのか、難しいけれど避けてはいけないテーマです。(私は清貧を進めているわけではありません。現在生活をする上で、ある程度の物もお金も必要ですが、適度、限度はあるし、独り占めは問題だと思うだけです。)

*注意:文中の企業事例は、社名のないものは事実に創作を加えてのご紹介です。私には守秘義務がありますので100%事実ではありませんことを踏まえてお読みください。なお、経営相談は無料でお受けしています。

[ 更新:2007-11-01 09:01:18 ]

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