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経営コンサルタント吉見からのお知らせ

吉見事務所通信2009年2月号(63号)より その2

【ダウンサイジングに当たって:緊急法の取組み方】
以下は1月の創造経営吉見ゼミで取り上げた内容の一部に手を加えたものである。私のお客様は12月に訪問した時も、1月に訪問した時も、売上はほぼ前年並みをキープしているところが多く、下がっている企業も全社で2~3%程度にとどまっている。しかし聞くところでは一部の業種では急激に受注がしぼむようで、心の準備(予防)として取り上げる。

(1)まず今後の売上の推移を想像する
 我社の今後の売上の見通しは、微減、大幅減、急落後しばらく横ばい、現状維持、微増、二ケタ成長等々いろいろあるだろう。まず、自社の得意先、お取引先をしっかり、冷静に、客観的に、自分の期待や慾を除いて先行きを予測する。
 浮き沈みは一時的な流れなのか、循環的な流れなのか(ファッションや流行のように時間が経つと回復するものか)、構造変化でもう元に戻らないものか、当分混とんとして予測不可能(真っ暗やみで見通せない)なのか、客観的な情報収集をし、それらをもとに自分の頭で考えて、考えて、考える。

 自社の得意先、お取引先に、資金(売上・予算)がなければ買ってもらえないし、ニーズ(需要・必要性)がなければ買う気持ちもわかないから商談にはならない。私たちはこの現実を忘れてはいけない。
①景気低迷、消費低迷の中で本気で自社の得意先、お取引先との共生を考えるなら、我社は得意先、お取引先に対し、資金(売上)が流れるように呼び水的支援(応援、援助、紹介など)を、具体的に何ができるか考えて、得意先、お取引先のためにささやかでも実行をしよう。
 1社ではささやかな、ちっぽけな支援・応援・援助・紹介かもしれないが、損益には微々たる貢献しかできないだろうが、その心がいつか相乗効果を呼ぶ可能性があるし、心をかけた相手の孤独感が和らぐことはいいことと思う。
②自社の得意先、お取引先のどのようなニーズ(需要・必要性)を喚起できるのか、それが行き着くところが新商品開発であり、事業開発(創造)ではないだろうか。そこに至る前段階として、得意先、お取引先に現在受注があってもなくてもしっかり通って、向き合って、相手の声や心や動向、ライフサイクルを含め、冷静に把握し、共に生きるもの、活かし合うものを探そう! これまで関わったご縁を自分から切るべきではないだろう。

(2)具体的手順
① まず自社の損益分岐点売上高の把握をする。
②予測した売上高で、何も手を打たないとどうなるか、最低でも向こう1年間、できれば3年間の損益予測と資金予測をする。そして資金の過不足高を具体的に把握する。自分で計算ができなければ、できる人の協力を得て行う。物事は、あいまいに取組むとあいまいな結果にしかならない。
③金融機関からの今後の融資見込(融資限度額)、個人(自分や親族、役員たち)からの資金補てんの見込み額を把握する。存続のため、場合によっては個人資産も含め、処分できる資産はすべて処分(換金)することも考え、処分できそうな資産は何か、処分すると幾らになるのか、処分に要する時間はどれくらいかを想像する。資金があれば赤字でも倒産時期は遅らせるが、資金がなければ黒字でも倒産する。
④我社が今廃業、解散、倒産した場合、誰が、どの程度困るかを考える。多数の顧客が困るということは、我社に存在価値があるということだ。債権者が困るということは、対処を誤ると怨みつらみをつのらせることになる。関わる人への迷惑は避けたいし、もしかけるにしても一時的に、かつ最小にしたい。そして生涯をかけて償いたい。
⑤損益均衡、資金収支均衡するにはどうしたら良いか、自分には何ができるか、誰が一緒にとことん協力してくれるのか、悩んで、悩んで、悩み抜いて考える。
イ)落ち込んだ売上を回復する(あるいは自力で回復できる)可能性はあるのか?→販売では新規開拓の前に、現在市場の徹底した深耕をする営業担当者がいるのか? いなければトップ自ら、一人になっても取り組む覚悟があるのか?
ロ)限界利益率を上げられる可能性はあるのか?→不採算部門や不採算事業があり、計画的な撤退・切り捨てができるか? 不採算部門や不採算事業があることが分かる会計システムがあるか? 生産原価・仕入原価を商品構成の変更、外注の有効活用あるいは社内制作への移管などで切り下げる余地があるか? これらを検討できる人材が社内にいるか?
ハ)固定費を削減する可能性は?→管理システムや物流システムを見直し、製造固定費や販売管理固定費を徹底削減する余地はないか? 実際には中小企業はこの項目の削減効果は少ないことが多い。あったとしても一過性、初年度効果で終わることが多い。ここで生み出した資金と時間で、次にどうするか、攻め手を一所懸命考える。

【事例】私の知る9月決算の企業だが、トップは10~12月の売上の推移を見て、年初予算を達成できないかもしれないと感じた。社長は幹部層は別にして、一般社員が不安に駆られ動揺し、地に足がつかなくなることを心配した。安心して仕事に集中させたいと考え、年初1週間で予算案の減額修正作業を行った。このスピード感と実行力は見習いたい。
ここで取り組んだ内容は、①最適人員の再計算(余剰人員の確認、補充の必要性の再確認)、②円高や資材価格ダウンのコスト減に与える影響の試算と交渉(石油価格の高騰が理由で値上げしたものは、いつから、幾らに値下がりするのかも交渉中)、③外注先には改めて競合見積もりを行い、価格差が明白なものは安い方へ委託先の変更、④残業時間ゼロ指示(可能な部門は定時退社の義務付け)、⑤最低室温20度に暖房機の温度設定の指示、⑥当社の販売量に応じて購買量もシフトする配慮を指示(苦しい時だからこそお取引先の販売量に応じ購買量も比例させよう)、⑦カラーコピーの社内利用の禁止(黒白印刷への手順書を作成し配布)、⑧高速道路のETC割引の有効活用(利用できる割引サービスの種類、時間帯、インターチェンジ間の距離の一覧表を作成しドラーバーに配布)等々多岐にわたっている。
社長は語る。「今後毎月進捗管理を厳格にすると共に、四半期ごとに予算を見直し、柔軟に修正する。今回やったのは、社員に不安を与えず、不要なプレッシャーをかけないためのものだ。具体的に指示した方が社員の動揺は少ないし、社員は実行しやすい。解決策を考えられる社員は限られているからだ。しかし経営幹部には、当初予算必達の心意気で対処すべく、会議では意思統一を行っている。自分はその先頭に立ち日々フル稼働している。」

ニ)人員削減の場合は、くれぐれも恨みをかわぬ様に、慎重に社員の気持ちに配慮して進めること。→断腸の思いで、給与カット・自宅待機・人員整理などで人員規模の縮小を図る。
ホ)その他、考えられることは全て考えて書き出す。書き出した内容は金銭計算をする。

 ⑥ 考えたことが本当に実行可能か、具体的に行動計画、利益計画、資金計画に落としてみる。計数のチェックは面倒でも必ずやること。自分でできなければできる人の協力をあおぐこと。トップが自分でやり抜く覚悟がなければ、中小企業は危機の克服は厳しいだろう。

[ 更新:2009-02-02 14:48:37 ]

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